2010年11月20日土曜日

ギブミーチョコレート

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が最近話題になっている。参加国は工業品・農業生産物、金融サービスなど例外のない関税撤廃により、貿易の完全自由化を目指すものである。単に生産品のみならず、金融や労働者の受け入れ制限ができなくなるため、農業はじめ今まで保護されてきた全ての産業が自由化され、国内産業が相当ダメージを受けるといわれている。

当初シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4カ国で発効したがオーストラリア、ペルー、アメリカ、ベトナム、マレーシアの5カ国が加盟、日本もつい先ごろAPECにおいて交渉参加に向けて関係国との協議に着手することを正式に表明した。

とまあウィキには紹介があるが、さらりと書いてある貿易の完全自由化には、日本の産業の荒廃を加速させるとんでもない影響が待ち受けているらしい。

メキシコの人はいう。メキシコが受けてきた苦難を日本が同じことを受けようとしていると。

1990年アメリカ・カナダ・メキシコの3か国で北米自由貿易協定(NAFTA)が発足した。その直後アメリカ産の安いトウモロコシがメキシコの市場になだれ込み、先住民を中心としたメキシコの主食のトウモロコシ農家が壊滅的な打撃をうけ、主食のトウモロコシは完全にアメリカに依存するようになった。

職を失ったメキシコ農民はホームレスになるかアメリカに不法移民となるしかなかった。アメリカは輸出する穀物には補助金を出して、他国に安く売れる仕組みをつくっている。労働力の安いメキシコですら、こういう状況になってしまった。

そうしたなかメキシコはアメリカと組む不利を悟り、南米ブロックへの傾斜をはじめた。
もともとアメリカはCIAの工作により南米に不当な干渉をし親米政権をあの手この手でつくってきたが、近年南米はアメリカ従属の軍事政権から独立民主政権を次々と生み出し、アメリカ離れを進めてきた。

アメリカは民主化と言いつつ一番大事なのは「アメリカのためになるかならないか」であり一旦アメリカのためにならないと判断すると、陰に陽に内政干渉をしてくる。言うことを聞かない政権は理由をつくりだしては爆撃までしてくることは、アフガニスタン・イラクで実証済みである。

実はそれ以前にアメリカは足元の中南米諸国には露骨な干渉をしてきた。1903年パナマ運河をどうしても手に入れたいアメリカは、それまでコロンビアの一部であったパナマを独立させ完全に傀儡である政権はアメリカに有利な条約を締結した。


このやり方がその後の典型的な南米支配方法になる。すなわちある国を属国にしたい時はその国の反対分子を応援し反乱させ、その依頼によってアメリカが軍事介入をするという手口をつかう。軍事力に勝るアメリカの応援を受けた勢力が当然のように政権を握る。アメリカの言うなりになる政権に対し、反対する勢力は10万人単位で粛清する。一時は南米諸国は親米政権ばかりになり、相互に連帯して亡命する反対する民主勢力を互いに粛清し合った。

もちろんこんな売国親米政権はだんだんその国の民主勢力に駆逐された。現在では露骨なアメリカの干渉やすさまじい親米政権の粛清を乗り越え、中南米のほとんどの国が民主勢力にとってかわった。

反米先駆者キューバは1959年カストロが革命を起こして以来、アメリカの禁輸が今も続く。支えとなったソ連が崩壊後もキューバは苦難を乗り越え、今では観光でヨーロッパ資本を導入、みごとに繁栄をなしとげている。

自国利益第一はやむを得ない。しかしそれをCIA工作と軍事力を背景に強引に進めるアメリカのやり方は世界的にも際立っている。その事実に世界各国は気づき始めているが、平和ボケ、ノー天気な日本だけがいまも「ギブミーチョコレート」をしていることはもう見るに見かねた状況になってきている。

アメリカに意見も言えない政府はもうたくさんだ。近くの国と自由に有効な話し合いもできない政府はたくさんだ。日本が戦後のアメリカ支配体制から脱却して真の独立を果たすのはいつのことやら。そのころには日本の輸出産業・大企業だけがのさばって、ほとんどの日本を愛する国民が産業を失い、ぼろぼろになってしまわないように、たった一人でも叫び続けたい。

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