2010年11月7日日曜日

日本の外交の稚拙さ

尖閣諸島沖での漁船領海侵犯体当たり事件に引き続き、北方領土へのロシア大統領の訪問事件が起きた。
この2つの事件で日本国の外交の稚拙さが浮き彫りになった。

尖閣諸島は国境の概念が完成した1895年以来日本固有の領土であるが(※1)尖閣諸島に石油資源があると分かった時点から急に中国が主張をしてきた。
漁船が中国政府のやらせかどうかはともかく、日本の領土に不法侵入してきてさらに海上保安庁の巡視船に体当たりしてきたこの2つの不法行為はある程度区別して対応すべきだった。

中国は尖閣諸島を領土と規定する国内法を整備している。日本は明確に日本の領土だとしている。もし領土問題とすれば2国間問題として継続的に交渉しなければならないのであるが、歴史的経緯からして領土問題にするのは中国側に無理がある。したがって日本政府は繰返し海上警備にあたらねばならない。これは譲れない。

巡視船体当たりはその場所が国内外にかかわらず違法性があるが、領土問題よりは、表現が悪いが「小さい問題」である。日本としては当然日本国で外国船が体当たりしてきたとして扱い、あとは海上保安庁から検察へ引き渡され、刑事罰を決定するという流れで処理をしようとした。当然の流れだ。

中国側は「尖閣は中国領、したがって海上保安庁が巡視活動をするのは「違法」、ましてや「自国領」の漁船が体当たりまでして抵抗したのは当然の行為」と考え、その後の対応をしてきたのは想像できる。ただし主張の前半はおおっぴらには言えない。せめて後半の「船長を返せ」だけを言ってきたのである。

最初この主張に取り合わなかった政府も中国から「レアアース」を人質に取られて大きく転換せざるを得なくなった。

ここから政治問題に発展して急遽船長を釈放することになったが、菅首相はこれを「検察が勝手に釈放した」とした。


検察はあくまでも政府の一機関だから首相の指示なしで勝手に釈放できるはずもない。また当初ビデオを公開はせず自らも見てないとした時期もあった。まったくありえないことだ。なぜビデオを公開しないかというとおそらく「中国への配慮」だと思われるがビデオがインターネットに流出した後も、中国がその事実に怒った形跡はなくむしろ「やはり巡視船からぶつかってきた」などととぼけている。全く無意味な「配慮」だった。

小沢氏もこの対応をニコニコ動画のインタビューで異論を唱えたが、日本政府は本来は次のような対応をすべきだったと思われる。

1.船長と船員逮捕後すぐビデオを公開。国際社会に向かって尖閣諸島が日本の領土であること、中国漁船が領海侵犯と体当たりをしてきたので、船員を逮捕したことをアピール。

2.(中国の「返還」要求に対し)取り調べを終え次第船員を「政治的に」釈放し、漁船を返還、船長を検察に引き渡す。

3.船長を取り調べ拘留期限がきたら、検察は全貌が明らかになっていなくてもそれまでの経緯を可能まで公表し、政治的問題であることに鑑み、処置を菅首相にゆだねることにする。

4.菅首相は中国との関係を重視し、「今後このようなことがないよう船長に言い聞かせて、釈放することにした」と発表

この方が堂々として筋が通っていたと思う。これを決断できるのは首相だけで、したがって菅首相は有能ではない、ということになる。

そしてメドベージェフ ロシア大統領の国後島訪問「事件」。

これは少し歴史的経緯を踏まえねばならない。

北方領土は1945年のヤルタ会談に先立つ1943年のテヘラン会談に端を発している。すなわち米ルーズベルト大統領は日ソ中立条約にも関わらず、対日参戦の見返りとして、南樺太と千島列島をソ連領にする約束をした。終戦後の1951年国会で放棄した千島列島に国後択捉両島が含まれると一旦明言したが、その後アメリカが政策を反共に転じたことを受けて、1958年には日本政府もその後押しで主張を変更、同年12月の日ソ交渉では4島返還を主張する日本と2島返還のソ連との間で合意が見いだせず、「平和条約」ではなく日ソ共同宣言にとどまって現在に至る。

すなわち問題の先送りだ。それから52年間も先送りし続けている。放っておけば解決するとでも思っているのだろうか。あり得ない。不断の交渉だけが唯一の道だ。もし日本政府が本当に解決してロシアと本格的に友好関係を築こうとすれば、での話だが。

国後島「訪問」はロシアの問題提起だと思う。要するに「早く解決して本来の外交関係を築こう」と。

これを考えずに常に日本の対応は慌てふためくだけ。国際的にみれば日本の対応のほうが奇異に感じられることだろう。

ロシアは「北方領土」を実効支配している。尖閣とは逆だ。民法では他人地でも10年実質所有し続ければその人のものになってしまう事実があることを考慮すれば、国際常識からみれば「領土問題は存在していない。」となる。2島返還も難しくなる。したがって4島返還原理主義にこだわることなく、現実的に不断の交渉で対応すべきと思われる。

そもそも外交は外国との常日頃の関係であるので、事件が起きなければ問題はない、ということではない。

貿易、為替など経済的なことは本当に日常的な対応を求められる。たとえば円高・自由貿易協定(FTA)・環太平洋戦略的経済パートナーシップ協定(TPP)など、まさしく緊急を要する課題だ。

貿易を完全に自由化すれば、自動車・家電などがすでに締結している韓国などと同じ土俵に乗れるが、農業などは壊滅的打撃を受けかねない。この問題は降ってわいたわけではなくすでに昨年あたりから始まっている。

環太平洋などと謳ってはいるが、実質的にはアメリカのしかも農産物を日本に輸出拡大したいというのが一番の狙いらしい。ただし自動車・家電など輸出産業が他国にくらべて不利になることをどう解決するかで頭が痛い。

有能な実行力のある首相でないと、大事な時期のかじ取りはできない。日本の外交問題は大半が日本の対応が対米従属一辺倒であることから生じてきている。このあたりをきちんとできる首相の誕生が強く望まれる。

(※1)尖閣諸島は国境の概念が完成した1895年以来日本固有の領土であるが、72年日中国交正常化後の78年鄧小平(当時副首相)が日本訪問の前に100隻以上の漁船を尖閣諸島周辺に繰り出して、突然尖閣諸島に領土問題が存在するかの様な対応をとり、日本での記者会見でも「72年の国交正常化交渉でも尖閣領土問題があったが「大局」を重んじ正常化を優先した」旨の発言をしたことが、今回や以前の石油開発問題の尖閣騒ぎになっている遠因だ。その時に時の総理の福田赳夫氏が明確に否定するコメントをすればよかったが単なる記者会見ということで無視をしている。

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