2010年11月18日木曜日

奇跡のリンゴ


このブログのタイトルであるのにかかわらずあまりテーマとしない「スローライフ」にすこし関係あることを取り上げたい。

最近読んだ、石川拓治著「奇跡のリンゴ」。

リンゴ農家木村秋則が、奥さんの農薬アレルギーをきっかけに、無農薬リンゴを実現するまでの苦悩の物語。

無農薬という言葉はよく聞くが、リンゴについてはそう簡単にできるものではないということを思い知らされる。
カビや菌から起きる病気、ハダニ、シャクトリムシ、ハマキムシなどリンゴの敵は多い。長年の「品種改良」でリンゴの木が本来持っている病気や虫に対する抵抗力をなくしたため、農薬なしでは実をつけることはおろか、木自身の生存すら危うい。

何年も何年も無収入の日が続き、7人の家族をまともに食べさせることもできなくても、木村秋則はあきらめない。家族も苦労をともにしながらも木村を支える。

しかし10年もの歳月をかけてあらゆる工夫をしても、一向にリンゴは実ってくれなかった。それどころか800本あったリンゴの木は死にかけていた。もう知識も経験もなにも役に立たなかった。木村は一本一本のリンゴの木に謝った。

絶望感から木村は夜、死ぬつもりでロープをもって森に入り、ちょうどいい木を探していたとき、光り輝く「木」に出会った。それはまさに無農薬~自然そのものの1本のドングリの木であった。なぜ無農薬なのにこんなにも健康的なんだろうと思った時、ふかふかの土壌、根をしっかりと張る木に気づいた。

それから思い直して再び挑戦し、今度は土壌に注目した。リンゴの下の雑草を刈ることをやめ、土壌が豊かになり根がしっかりとしてくることにより、だんだんリンゴの木が元気になり、ついに無農薬リンゴが実をつけた!

見栄えが悪く、小ぶりな姿に最初は見向きもされなかったが、試しに一口食べた人は驚いた。みるみるファンが増えていった。全国から木村のリンゴを求める人が殺到し、やっと木村とその家族の言い知れぬ苦労が実ったのだ。

ストーリーそのものはよくある成功談にみえる。しかし別の見方をすれば、あらゆるものが人工的、都市的になっている人間界で知識とか品種改良とか人知を尽くしても、自然のもつ偉大な力にはかなうべくもない。

人間はともすると強引に自然を抑え込もうとする。自然をむさぼり、奪い尽くし、人間が一番偉いとする傲慢な態度が、今の文明社会のさまざまなひずみを生じさせている。

まだまだそのことに気づいていない、気づいていても知らないふりをする企業や資本家が多い。地球温暖化をはじめ異常気象、災害の頻発など自然からのしっぺ返しがもっと起きないと気がつかないのだろうか。

昔から日本人が自然と調和して生活し、自然の動植物をいつくしんだ暮らし方が世界中から見直されてきている。「もったいない」はもう世界に通じる言葉になった。日本人はもっとこのことを誇りに思い、祖先が営んできた暮らしを見つめなおし、自らの生活をすこしずつ変えていこうではありませんか。

そのことを改めて感じさせてくれる物語であった。

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