2011年9月15日木曜日

行き詰ったカジノ経済の為に混迷を深める世界経済

銀行は預金の8倍の貸し出しが出来る。例えばある人から100万円預金があれば、そのうち10万円を手元に残しておき、90万円を融資出来る。その融資先がとりあえずその銀行に預金すれば、またその9割の81万円を、、このように繰り返していけば、なんと8倍ものマネーを創造できることになる。

現金は紙幣という形で日銀しか発行できないが、データ上のマネーはなんと一民間企業である銀行が作り出せることになるのである。

銀行は業績を上げるために、本来の企業支援や起業支援そっちのけで、この融資枠を活用して、自ら国債や金融商品購入に血道をあげている。かつて小泉竹中コンビが政権時代進めたいわゆる「新自由主義」の影響で目先の利益を追求し、3か月ごとに評価された業績が株価に影響するのを極端に恐れるあまり、こうした金融機関の動きが重なって「カジノ経済」を作り上げているのである。

日本は平成のはじめのバブル崩壊で、この仕組みにいやと言うほど苦しんだはずである。みんなが買いに走り、上がっているうちは、その資産や金融商品は魅力があるように見える。

しかしひとたび下がり始めると、これまた止まらない。あれよあれよと資産や金融商品は見捨てられ、あっと言う間に半分くらいの価値になり、それまでの利益は吹っ飛んでしまう。

これは全く実体経済とかけ離れたあたかもギャンブルの様な金融の流れなので、「カジノ経済」というのである。

まだカジノであれば損する人もあれば得をする人もあるので、まだかわいい。これが「カジノ経済」であると銀行など金融機関が莫大な損害をこうむり、倒産すれば預金者や融資先など実体経済に悪影響を及ぼすので始末が悪いのだ。

これが2008年9月に世に言う「リーマンショック」という形で再現されたのだ。日本の金融機関も少なからず影響を受けたが、何よりアメリカ経済自身がひどく傷つき、つい先日もバンク・オブ・アメリカンという銀行が政府資金で資本強化されたにもかかわらず、業績悪化が続き3万人ものリストラを発表したなど、いまだに尾を引く。

アメリカ政府も巨額の財政赤字が止まらず、国債発行を巡って議会と対決しているが、国債償還の為に新規国債が不可欠なので、事となりゆき次第によっては国債が償還できないいわゆるデフォルトとなって、米国債を保有している国(1位中国、2位わが日本)は何十兆円もの損害を被ることになり、またそれがその国の国債評価を下げることになる。

さらに世界一の消費大国であるアメリカ経済が不況のかげりを見せて、実体経済でも日本の輸出企業を直撃することになりかねない。

欧州経済もギリシャ国債のデフォルト不安や、そのあおりでの欧州銀行の経営危機の不安からユーロも為替相場を下げている。日本が東日本大震災で大変な状況にも関わらず、円を過去最高水準まで上げているのはこういう背景があるからだ。

もちろんこの為替相場も投機的な思惑で乱高下し、ギャンブル経済の悪影響を日本ももろにかぶっているのである。

このように世界経済が、「カジノ経済」という実体を乖離したマネーの動きで、とんでもないことになっている。一部の巨大な資産家だけが莫大な利益をあげ、世界中のあらゆる国が国債という借金地獄や銀行救済、これがもとでの景気悪化に苦しんでいる。

この主犯が「信用創造」でマネーを生み出し、それが多量に投機に向かっている仕組みにあることは明白である。こんなおかしな仕組みは早晩に改めないと、国家が破綻し国民が路頭に迷うことになる。

ビル・トッテンという企業家が「アングロサクソン資本主義の正体」という著書の中で、一般の銀行は実体のお金だけしか扱わないように改める「100%マネー」の仕組みを提唱し、その手順も具体的に示している。また投機的な為替取引の危険性を早くから指摘している経済学者ジェームズ・トービンが提唱する、為替取引の売り買い双方に0.5%税金をかけ、投機的為替取引を激減させようとする「トービン税」という手法や、元日銀研究所在籍のエコノミスト リチャード・ヴェルナーが提唱する銀行に投機目的の為の融資を禁じる「クレジットコントロール」という手法もある。
これはなんとかつて日銀が小泉竹中「改革」で民間企業になる前、銀行に対して行ってきた「窓口指導」と同じ方法なのである。

日本の政府も、いつまでも惰性や省益で行政を取り仕切り、一向に大きな改革のできない「官僚行政」をやっていては、こういう世界的経済の荒波を乗り切ることはできない。経済に明るい政治家があらゆるしがらみを断ち切って、思い切った改革をしなければ日本も沈没してしまう。

根本的な原因である金融機関の「信用創造」「投機的取引」を革命的に改めないと、実体経済が取り返しのつかないことになる。

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