昨日は大ナゴヤ大学長者町ゼミが主催する「今日ハ長者町映画館」というイベントに参加しました。2007年から始まった名古屋を舞台にしたショートストーリーのコンテストで受賞した作品を上映するもの。
今日は第1回受賞作品3本の上映です。
①「カヲリの椅子」
円頓寺を舞台に痴呆老人を収容するグループホームをテーマにした作品。たち振る舞いでは普通の社会ではなじめない痴呆老人であるカヲリが、もと住んでいた円頓寺で昔の幸せを取り戻すかの様なはしゃぎぷりに、周りを取り巻く人たちは意外そうに戸惑います。最後のシーンで公園でカヲリが座っていた椅子に、「私のいるべきところ」を暗示させています。(横山善太監督)
出だしがグループホームだったので、暗い作品を予想されましたが、かえって明るいカヲリに救われた思いでした。人は生まれ育った町への愛着は、一生残るのでしょう。
②「街灯りの向こうに」
結婚を目前にした娘が名古屋に帰ってきて、母の計らいで久しく疎遠だった父と、思いがけず二人で過ごす時間を持った。
何から何まで結婚相手と正反対の仕事人間の父に、テレビ塔に連れられて日暮れの景色を見る。それは昔幼いころ、同じように父に連れられ眺めた景色だった。子供の目にはもう暗くて隠れた山を、父は「見えないけどそこにあるんだよ」と言ったことを思い出した。
彼女はあらためていまも続く父の思いを感じて、そっと父の手を握った。そこには彼女が大好きな彼の手と同じぬくもりがあった。(山本亜希監督)
同じような年頃の娘を抱える身として、ちょっとリアルでくすぐったい作品でした。
③「熊の神」
近未来の世界は、核戦争が終結して北半球が氷と雪の世界への変わり果て、日本は軍隊が統治する軍事国家になっていた。食料も電気も不足する中、病気の母を抱える少女が、恋人である一人の将校から、いよいよ名古屋も見捨てられ、軍が南へ移動することを知らされ、母親か彼女か一人しか連れて行かれないと宣告され悩む。
父を亡くした彼女が悩んだままお墓参りに行った時、大きなヒグマの姿をした熊の神に出会う。熊の神は死んだ幼児を抱えていて、彼女は亡骸を埋葬する。そのとき熊の神に「墓守」を言いつけられた夢を見て、自分の取るべき道を悟った。母は南へ移動する日の直前に息を引き取ったが、彼女は恋人にこの地に残ることを宣言して、別れることを決意した。(山本亜希監督)
いまの時代を思わせる暗さがあり、以前だったらただの空想物語と受け流したストーリーだが、深刻さを身を持って感じてしまった。
ショートスト―リー名古屋は今年で第4回を数えるに至っており、その映画を見るのは初めてだったが、どれも思いがけず、見応えのある映画になっていて驚いた。特に2本目の作品の父親役を奥田瑛二が好演していて、さらに左右分割した作像テクニックもあわせて、舌を巻く出来だった。
今日10月1日は第2回と第3回が上映される予定です。(詳しくはこちら)
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